第15回文化庁メディア芸術祭に行ってきた

毎年恒例、国立新美術館で開催される文化庁メディア芸術祭を見に行ってきた。
何が賞取ったとかは取り立てて紹介する気がないんで公式リンクから確認を。

http://plaza.bunka.go.jp/festival/

今回は六本木エリアの様々な施設で映像作品の上映会やゲームの試遊展示をしてたり、メルセデス・ベンツ痛車の展示をやったり(ベンツ何してんのww)と、規模を拡大して開催していた。今回は廻ってる時間なかったので、新美術館の受賞作品展示だけ見て来た。

最近、カメラを買ったのでデビュー戦のつもりで行ったんだけど、普段あまりこういう所で熱心に写真を撮ったりしないので家に帰って見てみたら全然枚数撮ってなかった。
一応この展示会は撮影OKなところが多いんだけど、それでも少し腰が引けてしまう。後半は人も多くなって来てたし。

アート部門

しっぱなに展示されてた「particles」。発光、明滅するボールがレールを転がりながら空間を移動する。一言で言えば「でかくて光るSPACEWARP」。いくつになっても、こういうのにワクワクする自分がいることを再確認。


「Monkey Business」。Kinect使ってサルのぬいぐるみが自分と同じ動きをするっつーヤツ。これはアートに含めていいのかと思いつつ、Kinectも色んなところでその使い方を模索されてるなあと思った。


映像作品なので写真は撮らなかったが、大賞の「Que voz feio」がかなり面白かった。双子が同じ内容の過去の体験を語る様子を同時にモノクロ映像で流すんだけど、そこで語られてる内容の違和感とか、致命的な認識のズレとかが、強烈に後味の悪い印象を残してホラー映画を観た後のような感覚になった。

(以下、ネタバレ)
双子の中年女性が「子供の頃にブローチを誤飲した事が原因でおかしな声になった」という体験をそれぞれ語るのだが、二人とも自分だけがその体験をしたと記憶していて、吐き出すために病院で逆さ吊りにされた時の事やその時に見えた光景など、その体験をほとんど同じに、自分が経験したように生々しく語る。
どちらかは確実に記憶が改変されているのだけど、観ている方は同時に字幕で流れる(双子はポルトガル語で話している)体験談を追う内に混乱し、強烈な違和感だけが残り続ける。
そして、姉(妹)の声について語るとき片方は「姉(妹)は自分の声とそっくりなのであれが原因ではないのでは」と語り、もう片方は「姉(妹)は普通の声なのに自分の声は酷い声だ」と語ったところで話が終わる。
最後に姉妹のそれぞれの部屋がスクロールで映り、それぞれが飾っている二人の子供の頃の写真が大写しになって終わる。

マンガ部門

大賞受賞作の「土星マンション」。
これに限らず、最近はSF近未来的な世界における日常みたいなテーマの作品が流行ってるんだろうか。藤子・F・不二夫のスピリッツを継承したみたいな作品多くなってる気がする。

個人的には、文化庁メディア芸術祭で賞取る作品ってそれほど琴線に引っかからんのだよなあ。
あそこで選ばれてる作品って、なんというかビレッジヴァンガードとか青山ブックセンターに置かれてるようなオシャレの香りがするというか。芸術性という点で評価をしてるんだろうけど、自分が読みたいのはそっちじゃないんで。
審査委員会推薦作品あたりの段階だと、まだ良さそうなのもあるんだけど。

だんだんWEBコミックスマートフォンで展開されているようなコミックが賞を取るようになってきてる。


アニメーション部門

アニメーション部門エリアは全域写真撮影禁止なので、写真はないよ。
まどかさん等身大フィギュアとかあったんだけど、当然撮影は禁止だったよ。
マンガエリアは原画だろうがいくらでも撮影OKなのにアニメは全部アカンってのが良く分からんけどね。動画撮られたくないのはなんとなく分かるけども。

メディア芸術祭で賞を取るアニメ作品って、大体地味なのが多いけど今年は大賞がアレだから他が徹底的に地味に見えた。
鬼神伝とかも劇場版で豪華キャスト()なのに画面暗いから微妙に埋没しちゃってたな。
「やさしいマーチ」の前に人が集まってたのも、明るい色味の作品にみんな飢えてたからかもしれない。

エンターテインメント部門

大賞の「SPACE BALLOON PROJECT」。バルーンでスマートフォンとカメラを成層圏まで浮上させて、そこで募集したメッセージを表示させ、その模様をUSTREAMで流したプロジェクト、らしい。
これはエンターテインメントなのかな?どっちかと言うとアートに近い気がするんだが。

この部門は以前は携帯機を含むゲーム機の独壇場だったけど、今や完全にスマートフォンに持っていかれてる。審査委員会推薦作品でも3DSタイトルが2本ぐらいしか選出されてないし。
一番悲しいのはKinect自体が推薦作品として選出されてるけど、それを用いたゲームソフトは1本も選出されてないところだな。それどころか、アート部門でKinectを使った作品が選出されてるという有様だし。

敬礼アプリとか、プチプチアプリとか、どこか情報サイトとかで見たことあるようなアプリも展示されてた。


その他

最後、出口付近でクリエイター育成支援事業の成果発表が展示されていた中で一つ面白いのがあった。

「ゲームキョウカイ」。ゲームウォッチファミコンゲームボーイスーファミ、サターン、プレステ、ニンテンドーDSPSPWiiiPhoneKinectと世代ごとのゲーム機が壁際に並べられている。画面の左から右へ、もしくは下から上へと障害物や敵を乗り越えながらキャラクターを操作すると、隣接するゲーム機にキャラクターが移動する(ように見える)。そうやって、ゲーム機を渡り歩きながら右端のゴール地点を目指すという作品。
発想の面白さもさることながら、それぞれのゲーム機で遊ぶ内容がファミコンはマリオ風だったり、サターンはバーチャファイター風だったり、PSはバイオハザード風だったりと、当時の流行作品を微妙にパロっていて楽しい。解説員の人の話によると、ゲームメーカーに逐一使用や作成の許諾を得てたり、当時発売のTVモニタをヤフオクで落札してたりと色んな方面で努力の跡が偲ばれていい感じ。

まとめ

今年は全体的にこじんまりした展示だったなあ、と感じた。スマートフォン作品が増えたのが原因だろうか。

わざわざ展示を見に行ってスマートフォンを弄るのではあまり面白くないので、今後はスマートフォン作品は厳しく厳選して欲しいなあと思う。でも、来年はKinect作品が大量に出展されてそうな気もする。

あと、文化庁メディア芸術祭の場合は作品製作者が展示してるわけではないので質問は解説員にするのだけど、その解説員の質がピンキリだなあと思う。何を聞いても「私は作者でないのでよく分かりません」と答えちゃう人もいるし、積極的に細かい目に見えない部分の技術の話とか、製作時の裏話までしてくれる人もいる。
他の展示会だと製作者と解説者が同じなので説明不足は作者側の責任だけど、今回みたいに製作者と解説員が別の場合は解説員がヘボいと(作者が解説員とコミュニケーションを取らない人という可能性はあるけど)作者が可哀想なことになるなあ、とは思った。