これまでコミック単行本の自炊にはScanSnapのS300を使ってきたのだが、何百冊とスキャンしているうちに苦痛を感じるようになってきた。
スキャンするのに4枚/分とかの速度や、カラーか2値白黒のどちらかしか選べないとか、仕方ないのでスキャン後にグレースケール化するバッチをえんえん走らせたりとか(以下略)、こんなことを200冊ぐらい続けてきたら、まあ主に精神的な面で限界が訪れてきたわけで。
ここらでハイスペックなドキュメントスキャナに乗り換えようじゃないか、ということで色々と機種を調べたりした。
候補として上がったのは上位機種であるところの富士通ScanSnap S1500、そしてCanonのimageFormula DR-C125。価格帯といい、基礎性能といい、人気といい、両機種は割と拮抗しており、それでいて明確に長所や短所がハッキリしているのでどっちにしようか。
自分としては、定番のScanSnapより新鋭のimageForumlaの方が色々と(ネタ的にも)面白そうだったので、imageFormula寄りで調べてたのだが、まあこれがマイナス面が出てくるわ出てくるわ。ちょっと心が折られかけたものの、それを補ってあまりあるプラス面も多数存在してるわけでそちらに期待をこめてimageFormulaを購入した。
imageFormula DR-C125の主な機能とか、ScanSnap S1500との比較とかに関しては既に先達となる記事がいくつもあるので、そういった一般的なものは以下に任せることとする。
http://d.hatena.ne.jp/yonta24/20110723/1311372028
Desire for wealth : 定番自炊セット ScanSnap S1500 + PK-513L から DR-C125 + NV-BC100 に移行した
http://kating.blog.so-net.ne.jp/2011-09-04
キヤノンの新ドキュメントスキャナ「DR-C125」はScanSnapを越えたか?(後編) (1/4) - ITmedia エンタープライズ
http://monomania.sblo.jp/article/45978982.html
ここでは主に自分が購入前にメリット、デメリットだと思っていた部分が実際に使ってみたところどうだったか、といった観点でまとめていく。
利用情報
とりあえず主観的に書いていくので前情報として、自分の使い方とか環境周りについてざっとまとめ。
○ 省スペース
今まではいざスキャンしようという時には、まず設置&排紙スペース確保のためにテーブルの上を片付けて、ドキュメントスキャナを置いて電源とUSBケーブルを接続する。といった、一通りの設営作業が必要だった。
しかし、imageFormulaは排紙が上に跳ね上がる構造になっているので設置スペースだけを考えればよい。なのでPC机に配線含めて常設しておけるし、特に机の上を片付ける手間もなく気が向いたときにスキャン出来るようになる。実際、休日にまとまった時間を作ってやってた自炊作業が、帰宅後のだらだらしてる時間でやれるので作業頻度が上がった。
実際に、設置した物理的な環境はこんな感じ。
スキャン中はこんな感じ。
ただ、表紙などで一部厚みのあるものはどうしてもUターン排紙ができなかったり紙詰まりを起こしたりする。その場合はストレート排紙にしないといけないので、流石にスキャナの手前部分だけを片付けるか、机の端側にスキャナの排出口を向けて原稿を下に落とすような形をとる必要がある。とはいえ、A5サイズの単行本の表紙がたまに引っかかる事があるくらいで、ほとんどの単行本で問題ないのでまあよし。
△ カラー
カラースキャンに関してはガッカリ性能だと聞いていたので覚悟はしていた。そもそも、前に使用してたS300もガッカリぶりでは引けをとらないのでそれほど気にならない。
実際のところ、スキャン設定で「高画質モアレ除去」をかけることで、見た感じそれなりの仕上がりにはなるので個人的にはこれで満足してる。(ただし、モアレ除去は通常の数倍スキャン時間かかるが)
※1 全体的に暗い色のカラースキャン(左:通常スキャン、右:モアレ除去)
※2 明るい色のカラースキャン(左:通常スキャン、右:モアレ除去)
○ 消耗品
長く使うことを考えると後々響いてくる部分。調べた限りではあまり注目している記事がなかったのが残念。
以下、ScanSnap S1500とimageFORMULA DR-C125とでその値段と交換周期について表で比較してみた。
機種名 | 部品名 | 価格 | 交換周期 |
---|---|---|---|
ScanSnap S1500 | パッドユニット | 1995円 | 5万枚または1年毎 |
ScanSnap S1500 | ピックローラユニット | 6195円 | 10万枚または1年毎 |
imageFORMULA DR-C125 | 交換ローラーキット | 5040円 | 10万枚 |
地味に10万枚(1年)で3000〜5000円という価格差が発生。購入を決心した時点では本体価格はimageFormula DR-C125の方が2000円ほど高かったのだが、5万枚の時点で既にアドバンテージが消えてしまう価格差となっている。
もう一つ大きい点としてはimageFORMULA DR-C125の交換キットはamazonで注文できるということ。ScanSnapのほうはPFUダイレクトから購入するしかなく、こちら以前にS300の部品を注文した時には到着まで1週間程度かかったので、作業を進める上でそれなりのポイントになる。
ついでに、消耗品について調べてたらツワモノが見つかったのでとりあえずリンク。
× 傾き補正
補正が弱い弱いとは聞いていたが、この機能がほんと仕事してねえ。
四コマ漫画でこの傾き…、どういう基準で補正してるんだろう。こればかりは予想のはるか下だった。
色々と設定を変えて試してみた結果、以下を守った状態であれば何とかマシなレベルまで回復可能。
- 画像回転を使わない
・・・「90度右回転」設定にして原稿横向きでスキャンすると、紙が移動する距離が減るので高速化できるという話だが、その代わりに傾き補正が利かなくなるらしい。マジどういう順序で処理してんの?
また、画像回転0度で傾き補正をしてないものと比べても、格段に傾きやズレがでかくなっていた。 - 「文字の向きに合わせて回転する」を使わない
・・・こちらもほとんど補正されない。どころか、不要に回転させて向きが横になったり180度回転したりして使えない。
それでも、原稿を複数枚重ねてセットすると後半に行くに従って傾きが大きくなっていったりする。何の呪いだ。
あとは、文庫をpdf化したときなどは若干傾きがおとなしい。OCRとかの兼ね合いでうまいこと傾きを揃えてくれているのかも知れない。
とりあえず今はどうしても我慢ならない時だけ、jpgスキャン後に下のアプリで傾き補正をかけてる。
× 駆動音
スキャン時の駆動音がうるさいとは聞いていたけど、それほど大した事はないだろうとタカをくくっていた。が、実際に聴いてみるとやっぱり騒がしい。
どれくらいかと言うと、同じ机にあるPCのスピーカーで流れてる音楽とか動画音声が遮られるくらい。作業中の暇つぶしはある程度制限される感じ。
客観的な指標を測ってみようと、試しにipod touchの音量計アプリで測定してみた。
スキャン前の音量(55dB) | スキャン中の音量(73dB) |
なんかスキャン始めただけで20dB近く跳ね上がった、やべえ。ちなみにこのアプリで70dBは屋外を走行中の電車内で記録するレベル。
特に注目してなかったが気になった点
- 裏写り除去機能はなかなか優秀。ただし、思った以上に強くかかるので値を小さめにしないと細かい文字等はばっちり白飛びしてしまう。値は6段階ぐらいで調整できるが、実用に耐えうるのは最初の2段階ぐらいのように思う。
- 重送防止機能に関しては、そもそも重送が起こらないようにしてくれる機構なので、果たしてちゃんと機能しているかどうか、というのがよく分からない。まあ、これまで紙質の違う様々な原稿を試してみているけど、検知もされずに重送が起きてしまったデータはなく、ちゃんと取得できているようなので問題はなさそう。重送の検出機能もちゃんと働いてるようだった。
- スキャンアプリ(CaptureOnTouch)に関しては、スキャン設定を複数保存できたり、スキャン結果のプレビューがデフォルトで大き目の画像、さらに拡大して確認もできたり、出力先を毎回変更できたりと便利ではある。
しかし、プレビュー操作でページ個別に削除や回転をしたいと思っても特定の設定でスキャンした時でないと出来なかったり、詳細設定で細かくパラメータを与えたいところに限ってON/OFFのみだったり、便利なだけに細かい部分で気になる所が多い。機能は豊富なのに詰めが甘い印象。
まとめ
全体的に(覚悟していたというのもあったけど)デメリットだと思っていた部分は使ってみるとそれほどではないな、という印象がある。それよりもメリットの方が思ってた以上に大きかった。
作業に必要なスペースが小さくて済むというのは、かなりインパクトが大きい。これによって、本の自炊頻度よりも書類のスキャンの頻度が上がって色々と整理が進む結果になった。
あまり重視していなかったOCRや裏写り除去に関してもなかなか効果が大きく、カラーは諦めていただけにモアレ除去が想像以上にいい感じで、この辺りは嬉しい誤算だった。
傾き補正はかなり不満は残るもののアプリを使って補正してしまえばそれなりには納得ができるレベル。ただ、駆動音は実際に測定して数字を出してしまうとちょっと引くレベルだった。あとは、ちょっとでも厚い紙をスキャンすると(ストレート排紙にしても)紙詰まりを起こすのはいただけないけども。
結論として、音だけはどうにもならないけれど、他に関しては十分他人にもオススメできるレベルだな、と。
設定もケースバイケースでもう少し細かくこだわっていけば画質、効率の向上を狙っていけそうだし、自炊を楽しむという点においても伸びしろの大きな製品だな、というのが最終的な感想。