デジタルコンテンツEXPO2012にいってきた

今年もデジタルコンテンツEXPO(以降、DCEXPO)が開催されたので、週末に台場の未来科学館まで行ってきた。
今回は展示以外にセンターステージでの二つの講演、ディスカッションを見ることも目的としていたので、そちらを中心としてまとめてみる。

VOCALOID Trans-Pacific プロジェクト



経済産業省のクールジャパン事業にプロジェクト採択され、世界進出の足場がいよいよ固まったVOCALOID。今後の海外展開をどうやってくんだろうなーと思って、ライセンシー、メーカー、流通、クリエーターと参加者がオールジャンル揃っているこのパネルディスカッションを見に行った。
結論から言うと少々期待はずれなイベントだった。というのも、40分の時間のうち30分以上を「これまでVACALOIDでやって来たこと」の紹介に費やしてしまっていたから。政府のお墨付きをもらったことだし、ユーストリームで公開もしてるし、今まで興味のなかった人にもボカロとはなんぞやと知ってもらいましょう、っていう趣旨だったんだろなと想像するけれども。正直な話、わざわざこんな所まで見に来る連中はみんな知ってるわい、って話ばっかり見せられても、そのなんだ、困る。
一応面白かった話としては、北米圏ではネイティブなボカロが今まで存在しなかった(LEONやSweet ANNはイギリスやスウェーデンメーカーの製品)とか、オリジナルの日本語版歌詞も聞きたいが自国語の歌詞でも聞きたいというニーズにどう応えるかみたいな話の一例で、同じ曲の日中韓バージョン歌詞の聞き比べを流したりとかしてた。
まあ、まだ始まったばかりのプロジェクトだし、そんなに新しいことで喋れる事もないから仕方ないっちゃ仕方ない。来年2月にはMegpoidも英語版発売することが(しれっと)発表されてたし、来年あたりに成果報告が同じ会場でされるのを期待しよう。



開演前にはこれまでDCEXPOでステージ公開されたデモのビデオが流されていた

イグノーベル賞受賞「Speech Jammer」記念講演



もう一つは今年のイグノーベル賞受賞研究である「Speech Jammer」の開発者二人の講演。研究内容から、受賞までの経緯や授賞式での出来事まで多方面にわたる内容でかなり面白かった。
この「Speech Jammer」は発表行為を妨害するための装置なのだが、そもそも研究のスタートはプレゼンを指導するシステムについての研究だったらしい。発表中の被験者に指摘事項を的確に強制的に伝える方法はないものか、という課題を考えていた際に、吃音者治療などで研究されていた聴覚遅延フィードバック理論を利用して、発表者に発話阻害という行為で伝達しようと思い立ったというストーリー。
プロトタイプも4パターンほど作って、当初は性能を上げようと様々な装置を組み込んでみたがメンテナンスに苦心するようになり、どんどん部品を削っていった結果、主要な部品は2個程度になったのにどんどん性能が上がっていったという残念な開発過程をたどったらしい。
発表者に向けて数ミリ秒遅れて自身の発言を返してやることで、脳が発話異常を検知して喋ることができなくなるという仕組みだが、発表者が気合を入れていると効果がないらしい。それでいいのか。

試作機が完成し論文を提出しようという段になって、国内ではそれなりに論文通過したが海外ではまるで相手にされなかったらしい。ので、Webで論文とyoutube動画を公開してみたら、凄い勢いで海外ニュース等で話題になって海外メディアからのインタビューが殺到した、とのことでこの辺りが受賞の要因ではないかと語っていた。


開発者2人のキャラクターがとにかく良かった。風貌からして若手お笑い芸人のようでもあり、授賞式ではいかに笑いを取るか(イグノーベル賞では授賞スピーチで笑いを取るのが必須らしい)、授賞式ではスベッたのでMITでの記念講演ではいかに取り返すかを徹夜で検証したりしていて、「何やってんだか、もっとやれww」と思った。



透明プリウス

ここからは展示内容で興味をひいたものをいくつか。ちなみに、今回のDCEXPOでは展示物の感想をタグ貼り付けで表すということがされていた。「謎の技術」とか「ひっそりと評価されるべき」とか、かなりニコニコに毒されてるなあと思いつつ、逆にああいう方式が一般化してきたのかなあ、とも思った。


さすがに今回の展示の中では一番の注目株だったようで、体験時間は一人一分と厳しく管理されており車内の写真を撮ることもままならなかった。基本的には、車両後部に設置したカメラで撮影した映像を車内搭載のプロジェクターで後部座席に映すという方式で透けているかのように見せるという技術。
今回の展示会場は室内で暗かったから良かったが、普通に屋外では太陽光が強すぎてほとんど映像が見えなくなってしまうということで、写真のような偏向板が後部座席との間にあり、そこから覗いて下さいという方式になっていた。

聖水少女


正式なタイトルは長いのがあったけど四字で端的に表現できちゃうのでこれでいいや。3DCGキャラクターの女の子が水がめを持っていて水を注いでいる映像が流れており、立体視眼鏡をかけて水の注がれているエリアにセンサー付の紙コップを持っていくと、紙コップに振動が発生してあたかも水が注がれているかのような感覚を味わうことができるというデモ。
こりゃあ面白いなあ、と思って紙コップを傾けたり、立ち位置を変えたり、水がめにコップを近づけてみたり、と色々なことをして遊んでいたら解説員のおっちゃんが「この女の子、しゃがむとパンチラが見えるんですよ」と教えてくれた。あんた何言ってんだww。
なんでも今まで見学に来てたゲーム開発者とか漫画家とかが必ずパンチラにチャレンジしていたらしく、「これからはそういうニーズも捕らえていかないといけませんね」と意気込みを語っていた。もうこの国はだめなのかしら。

ものまねアバターシステム


午後イチくらいの段階ですでに結構なタグの数を集めていた。表情から感情表現を解析して、CGのモデルキャラクターに反映させるというもの。もはやCGモデルに初音ミクが使われるのは当たり前になりつつあるなあ、と思いつつフリーで使える素材がゴロゴロしてるというのは研究者には有難い時代なんだろうなあとも。
もともとは表情からの感情解析が研究主題でそのアウトプットとしての技術らしい。実際に表情から取得、解析して反映してる感情としては「怒る」「喜ぶ」「驚く」ぐらいしかなくて、他はほとんど眉と瞼と唇の動きをなぞらえるだけでそれらしく表現できてしまうらしい。

QUMARION


フィギュアにポーズをとらせると、各パーツ位置や関節の情報を3DCGモデルに反映させることができるというもの。以前にニュースかなんかで見た覚えはあったが実物を見たのは初めて。すでに販売されているらしく、価格もフィギュアとアプリがセットで10万円くらいで「あらお買い得」って感じだった。
フィギュアにポーズを取らせるので剛体的な問題で表現できないポーズがあったり、指先などの細かい部分は対応してなかったりと、どうしても細かい部分には逐一手で補正を入れないといけないようでそこはある程度仕方ない、というようなことを言っていた。
プロフェッショナル向けの商品というだけでなく、趣味で動画製作や漫画製作をしていて10万円くらいなら出しそうな熱心なアマチュアの取り込みを意識しているらしく、会場ではMMDのモデルにダンスをさせているPVを流したりしていた。

Pinch


複数台のスマートフォンタブレットを無線ネットワークで連動させて、ディスプレイ情報を共有、連結するシステム。デモでは波紋の広がりが複数画面に渡ったり、ボールが反射しながら隣の画面に移動するといった表現がなされていた。
なかなか面白いなあとはおもったけども、実際これを利用してどんな応用ができるのかという点について尋ねたら、あまりアイデアが至っていないらしく、とりあえず無償で公開してクリエーターにも考えてもらいたいというような事を言っていた。


AR HUDユニット

車のフロントガラス手前のサンバイザー位置にスクリーンを設け、そこにRGBレーザーを照射して虚像を作り出し、前方数メートル先にナビゲーションアイコンが浮いているように見せる技術。これも以前にニュースかなんかで読んでいたが、いつの間にか製品として販売されていたらしい。
運転席からでないとまともに見えないのでうまく写真が撮れなかったのだが、実際に乗って見た感じとしては照射してるのがRGBレーザーなので映像がチラついて微妙なことと、いかに虚像を出しているとは言ってもやはり焦点は微妙に合わせないといけないので目にはそれなりの負担がかかるということ。あとは、視点が上方に囚われてしまって実際に運転したときに足回りに近い部分の情報に気づくのが遅れるんじゃないかと。
とは言え、虚像にナビ情報が浮かび上がり、施設アイコンが徐々に拡大されて迫ってくる、あの感覚はなかなか今までにないものでワクワク感はかなりのものがあった。