SONY「Reader」の使用感まとめ

先週、SONYの『Reader』をプレゼントで貰った。Touch Editionの方を。
それからというもの、ここ数日ネットで調べたり、実際にデータを変換してReaderに放り込んでみたり、ブックカバーを探して街を歩いて絶望したり、メモステとSDカードを抜き差ししたり、電車に持ち込んで読んでみたり等々、色々と使い倒して遊んでいた。
その結果として分かったことは、様々な点で不完全な部分やツッコミ要素が多いなあと感じつつも、入手前に抱いてた印象よりはずっといい製品であるということ。
以下、自分の備忘録を兼ねて調べた事や使ってみた感想のまとめをてきとーに書き連ねていく。


対象ユーザ

とりあえず、まず一つ言える事は人を選ぶ製品であることは確実。
SONY的には紙の本を愛好してる人が電子書籍に初めて移行することを期待してるのだろうけど、実際にはある程度電子書籍を嗜んだ経験のある人の方がメインターゲットになる気がする。てか、今既になってるんじゃないか。
それでも以下のような人以外で、電子書籍に興味ある人なら十分購入に値するとは思う。

  • ある程度自分で自由に使えるPCを持ってない。
  • フリーソフト落としてdllを追加するくらいのマニュアル的な設定が自力でできない。
  • 極度にせっかち、速読愛好者。
  • 通信できないと死ぬ。

電子書籍データの準備

公式のReader Storeは品揃えと言い、使い勝手と言い、(今のところ)まごう事なきクソだが対応フォーマットがSONY製品にしては幅広く使えるため、他の電子書籍販売サイトで購入したデータがかなり利用できる。
とりあえず(Reader Store以外の)DRMがかかってない、.book形式以外のファイルなら大抵OKな感じ。ので、自炊等をしてなくても書籍データを手に入れる方法は意外と豊富にある。まあ自分の欲しいものがあるかは別だが。

Readerで読めるファイルを配布しているサイトをまとめてみた:とあるソニー好きなエンジニアの日記:So-netブログ
http://gutarin.jp/wp/?p=3651

自炊ファイルに関してはjpgをzip圧縮したファイルは流石に直接は読めないので変換が必要となる。また、pdfファイルに関してもReader用にサイズ最適化されたデータでないと酷くジャギるので一旦変換をかけてやるのが有効。(Readerの拡大・縮小機能はテキストはともかく画像に関してはあまり強くない)
変換の方法については後述。

データ転送

データ転送はPCからUSB接続のみ。PCからReaderへ、ReaderからPCへのどちらも転送可能。接続中はReaderも使用できないのでメモ等のReaderで生成したファイルを確認しながら転送、といったことはできない。
公式の転送ソフトeBook Transfer for Readerは起動時に毎回律儀にReader内データの読み込みを行いやがるので、ちょっとどころじゃなく使いづらい。エクスプローラから直接Readerにファイルを転送してやることも可能だが、どちらにしても転送にかなり時間がかかる。ファイルの転送が終わった後に何らかのチェックをしているのかプログレスバーが90%から動かないとか、そういう状態になるので。
また、転送終了後に充電を外すとReaderの方でデータの読み込みをするのだがこれまた少々時間がかかる。

Touch Edition限定、DRMなしのデータ限定だが、外部メモリに直接転送するという方法が一応ある。
メモステやSDカードをReaderに挿さず、リーダライタなどを介して直接データを放り込むと純粋なファイル転送時間だけで転送ができる(当たり前だが)。その後のReaderの読み込みに時間がかかるかと思いきや、なんら問題なく読み込まれ書籍データを閲覧することも普通に出来た。SONYの不思議仕様の一端を垣間見た気分がした。
キャッシュファイルが作成されるため、外部メモリは抜き差ししたそばからすぐにデータを検知する。ので、複数枚のメモステ、SDカードを用意しておいて、必要に応じて挿し替えて使用するということも可能。

データ管理

転送時はデータをフォルダ単位で送れるが、いざReaderを起動すると階層構造が全て解消されフラットになってしまい、突っ込んだ書籍データが全て書籍一覧に表示されてしまう。ので、あまり多くのデータを入れると目的のタイトルを探しづらくなってしまう。コレはかなりだるい。
一応、コレクションという機能で任意にファイルを選択してタグ付けグループ化みたいな事はできるが、転送ソフトやReader操作でいちいちコレクションを新規作成して〜、書籍を選択して〜みたいな事をしないといけない。また、コレクションは本体と外部メモリとにまたがるデータを一つのコレクションにまとめて作成できないのも残念。
さらに言えば、どのコレクションにも追加されていないデータだけを表示するという機能もつけて欲しかった。

上述のように外部メモリは差し替えてからすぐに読み取ってくれるので2GB程度のSDカードを複数枚使って読みたいデータに差し替えるという物理的な方法でなんとかすることもできる。が、ユーザにそんな事を強いるぐらいなら、今後のバージョンアップでもうちょっと何とかしてくれんかなーというところ。

http://www.sony.jp/support/reader/manual/PRS-650.pdf (pdfファイル:コレクションの作り方)

電子書籍閲覧

自分は以前まで電子書籍を読むのに使用していたのがiPod touchだったので、やはり画面サイズが3.5型→6型になったのは少なくない衝撃。ほぼ文庫本と同じサイズになった。電車内で片手で持てる実用サイズとしてはこの辺りが一つの理想形だと思う。
また自分は小説の文庫本もスキャンしているのだが、iPod touchでこれを見ようと思ったら流石にノーマルサイズでは文字が読めないので横持ちでサイズ2倍にして読むことになる。そうなると、フリックで上、下、上、下と何度も往復しなくてはいけない、そう考えると到底読み直す気になれなかった。でもReaderのサイズなら普通に読めるので再挑戦しようとも思える。



『自炊漫画データをReader(左)とiPod touch(右)で表示してみたところ』


Sony Reader (σ≧▽≦)σゲッツ: 〜自分メモ 2冊目〜 (iPadとの比較画像)
[画像] 【特集】ソニー「Reader」試用レポート(後編) ~配信ストアの使い勝手とPDFビューアとしての実力をチェック(16/34) - PC Watch (GALAXY TabKindleとの比較画像)

電子ペーパーも初めてなのだが思った以上に鮮明、夜に部屋の明かりぐらいでも暗くて読めないということもない。液晶のバックライトを目に浴びせて読んでいた頃を思うと、紙の本に回帰したという印象が強い。ページ切り替え時に白黒反転したり、切り替えで0.5〜1秒ほど時間がかかるので慣れるまではじれったい。この辺はもう電子ペーパーの仕様ぽいので合う合わないの問題かなー。

画質はまあ白黒16階調にしてはよく出てる方なんじゃなかろうか、と思う。小さい活字がつぶれ気味だったり、漫画などでは書き文字とか見づらかったり、線の細い絵や少女マンガ風の花柄トーンみたいなソフトな表現だとうっすら消えかかってたりするが、個人的にはギリギリ許容範囲。この辺は電子ペーパーの(略



『元原稿が白地に細い線だとコントラストでかすんでしまう』


画面タッチの反応はなかなか悪くない。タッチ主体の場合は、Readerを横方向から持つ格好になると思うのであまりダイナミックに指を動かせないが、ちょっと横方向に動くだけでもめくりを認識するのでその辺はイイ感じ。
ただボタン操作の方が、ページ送りボタン長押しでページを白黒反転せずパッパッと早送りできたりとか、OPTIONSボタン長押しで画面に触れずとも一つ前のメニューに戻れたりとかできるので、個人的にはボタン操作主体が良い。

Tips - Sony Reader Tips(ソニーリーダーまとめサイト/Wiki)


(2010.01.02 追記)
コメントで有用な情報を頂きました。『タッチによるページめくりでは、指をスライドさせて終点でしばらく指を止めておくことで連続ページ送りが始まります』とのこと。Touch Editionでも試してみたら1〜2秒ほど指止めでページ送りされました、おおすげえ。よく考えられた商品なんだよなあ…、一部考えられ過ぎてて使いづらいっていう部分もあるけども。


拡大・縮小はテキストベースのファイル形式ならフォントの拡大縮小なんでスムーズだが、画像ベースの場合はかなりガタガタになる。白黒16階層でスムージングしろと言っても限度があるのだろうけど。必然、元が大きいサイズの本や文字が小さい本のpdfを変換して持ち込もうとしても非常に読みづらくなる。

バッテリーは減るのを検証する作業が途中でダルくなるぐらい減らない。液晶と違ってページ切り替え時しか電池使わないから、読み途中で放置しても問題なし。誰かがブログで書いてたが、マニュアルみたいに常時開いておきたい本を見るのには電池も食わないし、液晶みたいに途中で勝手に画面が暗くなったりもしないので最適。ただし、マニュアルほどのサイズの本を読むには6型ではそれなりに限度がありそう。


音楽プレーヤー

これはまあオマケ機能なのだろうなあ。購入者のブログとか色々と見てきたがその使用感を書いてる人がほとんど居なかったので期待されていないんだろうなーと思える。まあ自分も常用するつもりはないけども。
で、使ってみた感じは割りとちゃんとしている。音質もしっかりしているし、専用プレーヤーのような機能性は無いけれどシャッフル、リピート機能程度は存在し「ながら」で曲を聴く分には申し分ないレベル。

ID3タグを読んでるのか、適当に曲を突っ込んでも勝手にアルバムごとに分けられる(アートワーク画像まで取り込まれる)シャッフル単位がこの勝手に区切られたアルバムごとなので、突っ込んだ全曲をシャッフルして聴くようなことが出来ない。この製品はこの手の微妙な仕様が多くてなかなか苦笑を禁じえない。
一度音楽を再生するとOPTIONSボタンから今読んでる書籍に戻れたり、また書籍から音楽プレーヤーに戻れたりと行き来がしやすくなっていて、こういうところは良い配慮なんだが。

イヤホンジャックの位置が下に、しかも中途半端に真ん中よりにあるので、下持ちボタン操作で本を読んでいるとイヤホンケーブルに手や指がひっかかってうっとうしい。操作系が集中する場所にわざわざ外部端子を配置するデザインはいささかどうかと思った。


外に持ち出してみた

ひととおり機能を試したところで、今度は自分にとってのメインの使用環境であるところの電車内での読み心地を試してみる。

そのためには裸で運ぶわけにも行かないので画面や本体を保護するカバーが必要となるのだが、SONY純正のブックカバーはどこに言っても売り切れという始末。そもそもブックカバーの生産量が、売れないと思ってたのかReader本体と比べてかなり少ないらしい。マジでSONYしっかりして下さい。

手に入らないものは仕方ないのでしばらくは代用品で対応することにした。
以下のブログで、コクヨのA6カバーノートに両面テープで貼り付けるというワザが紹介されていたので、そのアイデアを頂くことにした。ちなみにカバーノートは東急ハンズの手帳コーナーにいっぱい売ってた。少し右側がはみ出し気味になるがサイズは計ったようにピッタリなのでしばらくはこれで良さげ。

Sony Readerのカバーを自作してみた。 | 徒然なるままに



実際に通勤の電車内で読んでみた感じとしては、非常に快適。
吊り革につかまって片手で本を持って読むと言うスタイルにはまさに最適。カバー無しのままでも裏面はすべらないような加工をされているが、ブックカバーをつけたことでよりフィット感も上がり、電車の揺れでうっかり落とすようなこともない。
朝でも夜でも電車内の光量は思いのほか高いため、暗くて読めないと言うことはまずない。ちなみに電子ペーパーは液晶と違い画面が反射を起こさず快適に読めるはずなのだが、画面に指紋防止の保護フィルムを張っているため、これが光を反射してしまうようだった。あまり画面に触らないで操作できるし、液晶と違って指紋が目立つような画面の質感でもないのでフィルムは張る必要がないんじゃないかと思う。タッチペンでガリガリとメモを取りまくるなら話は変わるが。

ブックカバーをつけたことで、普通の紙の単行本を持つようなスタイルで電子書籍を読めるのが良い。パンフ等を見ると本来はブックカバー表紙を後ろに折りたたんで持つスタイルを推しているようだが、自分は右手親指をページ送りボタン上に置いて、人差し指で裏表紙を軽く支え、残りの指で背表紙を包むようにして持って読んでる。こうすると外見からは普通の本を読んでるように見える(一切ページをめくる素振りをみせないのと、金属部分がはみ出してるのを気にしなければ)


その他雑感

■メモ機能
あんまり使わなさそうだなあ、ニンテンドーDSばりの書き味だし。マーカー引く機能ぐらいは参考書データを読む場合に使うかもしれんが。でもマーカーが引けるのはテキストベースの書籍のみ、画像ベースはマーカーではなくメモ書きのみ。

■素材・形状・重量とか
薄くて軽いがアルミ製なのでがっちりとしている。Readerと紙の本とを持ち比べて見たが、あまり大差が無い、というより紙の本って重いんだなーということに改めて気付かされる。下手すりゃ、ちょっと厚手の本だとこれより紙の方が重くなる場合すらある。

■データの最適化変換
とりあえず、ChainLPというデータ変換フリーソフトが最強すぎる。
画像zipもpdfも青空文庫のテキストも一発で最適なサイズ、色データのファイルに変換してくれるので素晴らしい。



『最適サイズ変換前(Jコミ高画質版)。文字が潰れたり吹出しの枠がカスレたりしている』



『最適サイズ変換後。潰れやカスれが起きていない(写真がボケているのはご愛嬌)』


No.722 (ChainLP公開サイト)
Sony Readerで自炊漫画を読むよ - 旧機械 (後半でChainLPの使い方解説)
Comic/lrf - Sony Reader Tips(ソニーリーダーまとめサイト/Wiki) (設定の例)

総合まとめ

基本機能にはあんまり不満がない。電子ペーパーっていう性質上、出来る事と出来ない事がはっきりしてるのは止むを得ないところだし。そもそも、この製品自体がテキストを読むことメインで、画像はオマケみたいな感覚なんだろな。テキストベースな書籍データのために用意された機能が多いし、Reader Storeに漫画が一冊も無いあたりもその辺が伺える。そこに文句を言っても改善はされないだろうなーとも思う。

ただ、一覧表示とか音楽ファイルをアルバム単位にまとめたりとか、データ管理のところはもう少しこっち側に主導権を持たせてくんないかなー、とは思う。適当に突っ込んでも自動で整理してくれるのはいいんだが、こっちの意図を無視してまで整理するのはお節介すぎるという印象。お前はお母さんか。