能登半島で輪島塗のミクさん痛箸を作ってきた

GWの前半を利用して能登半島へ行って来た。
半島をレンタカーでぐるぐる回っていた中で立ち寄った輪島市街で、輪島塗の沈金体験が出来るというのでやってみることにした。
沈金というのは塗物に上から絵を付ける技法のひとつで、塗り箸に模様を彫って、漆と金粉でその模様を定着させるというもの。
体験をやっていたのは、輪島工房長屋。一膳1500円で作ったらそのまま持ち帰ることが出来る。(蒔絵の方は後日配送)

輪島工房長屋


で、せっかく絵柄をつけられるのだから、ソレ系の絵を描いてみることにした。
なるべくシンプルな線で表現できそうな絵という事でこちらを採用。


はちゅねの元絵をiPod touchで取得。
ちなみに輪島市街はWiMAX受信可能エリアとなっていた。


練習と彫り方

いきなり箸を削り出してしまうのは流石にリスクが高すぎるということで、まず最初は練習用の板を使って削り方を習う。
削るための道具はこちら↓


一応ノミらしいんだけど、どう見てもボールペ・・・


彫り方のコツとしては3つのポイントがあって、

  1. 彫るときはカリカリと音が出るくらいしっかり深く彫る
  2. 縦彫りか横彫り、好きな方向を定めるとよい
  3. 曲線や○を彫るときは左側、右側というふうに分けて彫る


1. 沈金は彫った溝の部分に漆を摺り込んで、さらに金粉を沈めることで定着させるのだが、この時の溝が浅いと金粉がうまく定着しないため深く削ってやる必要がある。塗り箸の漆部分の下の木の部分までしっかり削ると「カリカリ」という軽い音がするので、これがちゃんと彫れていることの目安になるらしい。

http://www.wajimanuri.jp/salon/chinkin/chinkin.html


2. 彫るものが面積の小さく細い箸なので、自分が力を加減しやすい方向をある程度把握しておいて、あとはその方向に向けて彫れば良いように彫る土台である箸を回転させればやりやすいし、ミスがなくなるとのこと。


3. 曲線を彫る場合、とくに○を彫る場合には一筆でくるっと彫るのは失敗しやすい。ので左側と右側という風に分けてそれぞれを彫って合わせるイメージで彫るとうまく彫れる



上の3つを意識しながら、練習用の板をカリカリ削って大体の感覚をつかみつつ、いよいよ箸の方に直接彫りを入れていく。
ちなみに、彫り途中の箸の写真を撮るのにマクロレンズ(×4)が大活躍してくれた。
持ってきたはいいけど使いどころ絶対ないだろうなあ、と思っていただけに嬉しい誤算。


本番

これがベースとなる塗り箸、すでに黒い光沢が見事。


まずは目と口とほっぺの渦巻き。
この渦巻きが先ほどの3. の左側、右側に分割する彫り方をしたのだがなかなか厳しかった。


前髪を追加。


顔の輪郭線とサイドの髪。
この辺り、線がブレていて迷いを感じる。


襟とネクタイ。


シャツと腕を追加。


左腕。パネル部分はテキトーにごまかす。


右腕とツインテール
見切れてるけど裏側ではちゃんとネギも彫ってる。
箸の角の部分で必要以上に削れてしまって木目が剥き出しに…。


左のツインテール
このあと、ちまちまと影を入れる作業を施す。



ここまででとりあえず一本分の彫りが終わり。彫り始めからで大体40分近くかかった…。
とは言え、もっとグダグダになると思っていたのに想像以上に箸が彫りやすかった。
あのペン型のノミが細かい作業にベストすぎて侮れない。
慣れてきた後半になると、結構ペースアップして彫ることが出来ていた。


ということで、もう一本。
今度は居眠りバージョンで。


正面。
地味にヨダレ部分の彫りが難しかった。


右腕。
影の入れ方とか、曲線の引き方がやっつけ気味ながら一本目より迷いがない分上手くなってる気がする。


そしてネギ。
ちょうど一周して左側の髪が見えるようになっている。


2本目は慣れたもので、かなりやっつけ気味だったとは言え1本目の半分くらいの時間で彫り上げることに成功。
と言っても、両方合わせて1時間以上は優にかかっているんだが。
更にいえばやっつけ気分で作業したせいで、2本目のはちゅねは1本目と比べてずいぶん背丈が伸びてしまった。


沈金

そして、いよいよ沈金の本番作業に移る。
ここからの作業は工房長屋の職員のお姉さんにやって頂いた。
お姉さんに「よくここまで彫りましたね」と、半ば呆れたような視線を送られる。
どうもありがとうございます、我々の業界ではご褒美です。


まずは箸の溝に漆をすりこんでいく。


余分な表面の漆を拭き取った後に、金粉をすりこんでいく。



自分の彫り引いた線に金粉が入って光を放つようになっていく様はなかなか感動的ですらある。



そして、出来上がりがコチラ。

適当にガリガリ削ってた影とか袖の塗り潰しとかにも、ちゃんと金が入ってる。



2本目の方は迷いがなかった分、線が細めになっているがそれでも金はちゃんと乗っている。



正直、あんま期待せずやってきた体験だったのでそこまで気合を入れるつもりもなかったのだが、思いの外熱中してしまった。
多分、彫ると言うよりは描くという方が近いくらいの感覚でサックリ苦労なく出来てしまうのが大きかったかもしれない。
結局、1時間半ぐらい滞在してたのでその後の予定が全部狂ってしまったのはご愛嬌。

この沈金体験、ちょっとハマってしまったので関東圏の方でもやってる所ないかなー、と思ってググってみたけど本当に石川県ぐらいにしか出来るところが無いらしい。というか、「沈金」ではなく「賃金」の方で検索が引っかかるのはいかがと思う。


おまけ


箸の天井部分には「3」と「9」を彫った。この部分は股の間に挟む位しか固定も出来ないし本当に彫り辛かった…。